キノボリウオ(学名:Anabas testudineus)は、南アジアから東南アジアに広く分布するキノボリウオ科の淡水魚で、その名の通り陸上を這うように移動できる特異な生態で知られています。本種は頭部にラビリンス器官(迷宮器官)と呼ばれる補助呼吸器官を備えており、水中の酸素が不足する過酷な環境下でも、水面に口を出して大気中の酸素を直接取り込むことが可能です。この優れた呼吸能力により、乾季に生息地の水が干上がった際、湿った地面を這って別の水域へと移動するという、他の魚類には見られない劇的な生存戦略を確立しています。飼育下では極めて強健で環境適応能力が高い一方で、非常に高いジャンプ力を持ち、わずかな隙間からも脱走を図るため、重しを乗せた隙間のない蓋の設置が不可欠です。また、食性は肉食性が強く、口に入るサイズの生体はすべて捕食対象となるため、混泳相手の選定には十分な配慮が必要です。野性味あふれる無骨な容姿と、生命の力強さを感じさせるその独特な振る舞いは、古くから多くの熱帯魚愛好家を惹きつけ続けています。
